willingwork株式会社の守田です。
新年初めてのコラムです。
今回は、昨年末に発表された税制改正大綱の相続に関係する部分について紹介します。昨年の税制改正大綱では、いつか変わると言われていた部分の改正があったので、相続対策を検討する上では非常に大きな出来事だと思います。
これを踏まえて、我が家の対策はどうかと考えるきっかけになれば幸いです。
① 生前贈与加算の期間が3年→7年に延長
生前贈与加算とは何かから説明していきます。
簡単に言えば、贈与をする側が亡くなる前3年の間にした贈与は、相続税の計算において足し戻して再計算されるというものです。自分のお財布からお金は無くなっているのに、無くなっている分についても相続税がかかるというのが、生前贈与加算の概念です。
そして、この期間が3年から7年に延長されることになったのが今回の税制改正です。これまで贈与税の非課税枠(110万円)を利用して贈与を実行していた人は、贈与を続けるべきか別の対策を考えるかを判断する必要があります。
以下に、私なりに考えた贈与を続けるべき人と別の方法を考えた方が良い人について記載します。贈与者、受贈者の関係などによりこの記載が当てはまらない人もいますのでご了承ください。
110万円(もしくはそれ以上)の贈与を続けるべき人
- 長生きや健康に自信がある人
- 実年齢が若い人(〜60歳くらいを想定)
別の対策を考える方が良い人
- 7年以上生きるのはちょっと…という人
- 生前贈与加算を気にしたくない人
別の対策を考える人には、同じく改正された相続時精算課税制度の利用をご案内いたします。
② 相続時精算課税制度の改正
相続時精算課税制度とは、読んで字の如く「相続の時に精算して課税する制度」です。何のこっちゃという意見が聞こえてきそうですので、簡単に解説します。
この制度は、2,500万円までは何をあげても贈与税はゼロで、仮にそれを超えたとしても贈与税は一律20%の税率で良いですよ、という制度です。贈与税の税率は累進税率と呼ばれるもので、最高税率が55%となっています。例えば親から20歳以上の子に1億円を贈与した場合、相続時精算課税制度では贈与税は1,500万円ですが、一般の贈与(暦年贈与)だと約4,800万円の税負担となります。なので、これだけ見ると良さそうな制度だと思いますが、落とし穴があるのです。
それは、あげた財産の総額は相続税の計算において足し戻して再計算されるということです。つまり、相続時精算課税制度を利用して1億円の財産を贈与し、自分の預貯金が減っていても相続税の計算上はその1億円の財産があったものとして計算しなければいけないということです。また、この制度を一度でも選択すると、毎年の110万円の贈与税の非課税枠は無くなってしまいます。なので、この制度を選択する場合には慎重にならざるを得ないでしょう。
ここまでが現行の相続時精算課税制度の案内です。上記だけをみると、あまりメリットが無いと思われる相続時精算課税制度ですが、税制改正大綱により大きく変貌を遂げます。それが、毎年110万円の非課税枠の創設です。これにより、前述した生前贈与加算の概念がなく毎年110万円の贈与をしていくことが可能となります。
上記の通り生前贈与加算の期間が伸びることで今後は相続時精算課税制度を選択する人が劇的に増えると思われます。ただし、制度適用ができる人が限られていることや110万円を超過して贈与をする場合には従来通りの規定となりますので、選択は慎重に行うべきだと思います。
まとめ
上記を踏まえて、相続税対策は大きな転換期を迎えると思われます。どの制度を利用すべきかの答えは各家庭において違います。「あの人がこれをやっているなら、これが正解か」というものではありませんので、ご注意ください。
また、相続対策のうち税金対策に偏重しすぎても権利関係で揉めることで、節税された金額よりも大きな金銭負担が発生する可能性もあります。全体のバランスを考えた相続対策を実現していくことが望ましいと思います。
弊社では今年も皆様の相続対策をご支援いたします。一生に何度も経験することがない相続対策ですので、事前準備をしておきましょう!まずはお気軽にご連絡ください。