困っている人を助けるための相互扶助の精神で行われる寄付。
良いことである寄付が、その金額が多すぎて問題が起きたようです。
それがこちらの記事。
認知症疑いの患者が大学に3億円寄付 遺族は死後に事実知る…金沢医科大学側に賠償求め提訴
(TBS NEWS DIG より引用)
上場企業の経営者が寄付をした3億円に対して、遺族からその寄付は無効である旨の提訴がなされたというなんとも悲しい事案であります。
この件では、寄付によるものかは分かりませんが、相続人が負債を背負うことになってしまったようです。
寄付をした時の意思能力が争点になりそうな事案であり、これから寄付を考えている人には心配になる事案だと思います。
私は、これまでにも多数の寄付に関する相談を受けてきました。
いずれのケースにおいても、寄付をする理由の確認をすることで意思能力については最低限の確認をしています。
また、それに加えて寄付により自身の生活が困らないかどうかについても確認しています。
寄付によって自身の生活する財産がなくなってしまうことは大問題です。
寄付をする際には、自身のはっきりとした意思と寄付した後の自身の生活に問題がないかを確認しながら対応する必要があります。
併せて、寄付によって相続人に不利益が出ないかについても確認をする必要があります。
ここでいう相続人の不利益とは、本来もらえるはずであった財産が寄付によって減ってしまうことを言います。
これは遺留分を侵害していないかの確認ということができます。
遺留分とは、遺言等により自身の取り分を著しく減らされた場合や多額の生前贈与や寄付などにより自身の取り分が減ってしまう場合に、一部の相続人の取り分を認めてあげましょうという権利のことです。
この遺留分は配偶者や子、孫、親などに認められ、兄弟姉妹や甥姪には認められません。
これらを考えずにした寄付は、遺留分の侵害が発生し、寄付したお金を返還してもらわなければならないという事態になりかねません。
寄付をする場合にはこれらのことを考えるべきでしょう。
上記を踏まえると、寄付に関しては3つの対応をする必要があります。
一つ目は寄付をする意思を明確に示すこと。
二つ目は自身の死後に寄付をすること。
そして三つ目が相続人に対して問題がないかを確認すること。
これらを満たすためには、自身の全財産の把握をしながら、寄付の意思を公正証書遺言で示す必要があります。
本来は生きている間に寄付をして、自身の尊厳の表示や感謝を求めたいという気持ちがあると思います。
が、紹介した事案のような問題点が起こる可能性を排除するためにも、寄付の意思を公正証書遺言で示すことが大切になってくるでしょう。
せっかく善意で寄付をするのであれば、それが問題にならないような対応が必要です。
弊社では、寄付をしたいという相談にも対応しております。
寄付をしたいと考えている人は寄付による不利益が発生しないかどうかを一緒に考えながら対処していきましょう。